広告業界1年生に読んでほしいアフィリエイト広告のお話

入社や異動の時期、急にweb広告の運用を任され周囲に教えてくれる人もいない…。 この記事を読んでいる方の中にも、そんな状況に置かれている方がいるかもしれません。 4マス(TV / 新聞 / 雑誌 / ラジオ)に輪をかけてweb広告は複雑で、「CPA」「imp」といった3文字略語が飛び交うとっつきにくい分野です。

当社は広告配信システム『admage®』の開発をしている会社で、様々な形式の広告の配信に関わっています。今回は当社が関わっている広告のうち『アフィリエイト広告』について、初めてweb広告に接する方に向けて説明します。細部の説明は省くので詳しい方が読んだら「ん?」と思うところもあるかと思いますが、ご容赦頂ければ幸いです。

アフィリエイト広告という広告形態の概要

アフィリエイト広告は「成功報酬型広告」と翻訳されます。誤解を恐れずにいえば、アフィリエイト広告とは「あるwebサイト(=メディア)で商品を宣伝し、サイト訪問者(=ユーザー)がそのサイト上に設置されたリンク経由で商品を購入すれば、宣伝したwebサイトに広告主から報酬が支払われる」という形態の広告を指します。

※ここでは「購入」としましたが、実際には商品購入から問い合わせ、資料請求など 成果となるアクションは様々です。また実際にはクリックしただけで報酬が発生する 課金形態のアフィリエイト広告も存在します。

またアフィリエイト広告を貼ることで収益を得るメディア運営者をアフィリエイターと呼びます。一般的には個人のイメージが強いですが、法人としてアフィリエイト広告を貼るメディアもあります。

バリューコマース法人向けアフィリエイトプログラム)

いわゆる「ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)」は、こういった広告主とアフィリエイターとの仲介をする役目です。いわゆる代理店とは少し異なり、広告主とメディア(アフィリエイター)がアフィリエイト広告を取引する場を提供しているイメージです。

アフィリエイトの流れ

web広告の報酬(=広告主からすると”課金”)形態は「表示回数保証」や「クリック課金」をはじめ様々な種類がありますが、この購入すれば報酬がメディアに支払われるという点がアフィリエイト広告の特徴です(だからこそ「成果報酬型広告」と言います)。この課金形態にはメディア運営者と広告主、ユーザーの3者にメリットがあります。

メディアの運営には当然お金が必要で、その源泉は多くの場合広告収入が担っています。しかし「アドネットワーク」のような広告の場合、必ずしもメディアのコンテンツと一致した内容の広告ばかりが表示されるとは限りません。その点で、能動的に選択できるアフィリエイト広告はメディアのコンセプトと一貫させることが容易なので、広告によるメディア価値毀損のリスクが少ない広告形式です。「広告を起点にコンテンツを考えることができる」という点で、サイト運営者の視点ではネタに困らないというのも利点かもしれません。

一方で広告主側からすると、 (購入などの) 成果が発生しない限り広告費用を支払う必要がない為、とても合理的な形態です。例えば表示回数保証、つまり「○月×日~○月△日までの間に□□回メディア上に広告を表示します」という広告の場合はたとえユーザーが一切広告をクリックしてくれない=広告主のサイトに訪れてくれない場合でも、表示回数さえ契約通りであれば支払い義務が発生します。 またメディア運営者が収益を発生させるには広告経由で購入してもらう必要がある為、必然的に商品の紹介に熱心になり、説得力のある紹介や詳しいレビューをメディア上に掲載してくれるのも、広告主にとって大きなメリットです(実はこの他にも以前はSEO上”バックリンク”というメリットがあったりしたのですが、それはまた別のお話…)。

ユーザーから見ると、第三者であるメディアが商品を紹介するので、広告主からの直接の宣伝よりも客観的に商品の良し悪しを知ることができるのが利点です。 メディア側は他のメディア(※同じアフィリエイト広告を貼るサイトは複数存在)と同じ程度の情報を掲載してもユーザーを説得することは難しい為、できるだけ他にない情報を提供しようとします(独自の情報を提供することはSEOの観点からも非常に重要です)。より商品を吟味して購買できる点は大きなメリットです。

アフィリエイト広告の表示形式

アフィリエイト広告、というと以下のようなバナー形式を想像する方が多いかもしれませんが、実はアフィリエイト広告においてバナー画像は必須ではありません。

アフィリエイト広告のバナー画像サンプル

アフィリエイト広告で肝心なのはこのバナー画像に貼られているリンク、もっと言えばこのリンクに設定されているURLです。 このURLには、メディアごとに異なる「パラメータ」という、識別情報が付いています。このパラメータによって広告主はどのメディアから来たユーザーが商品を購入したのか判別することができる、というわけです。

従って、アフィリエイト広告の中にはバナー画像を持たない、テキストのみのリンクとして設置されるものも存在します。リンクを設置する文脈や位置によってはバナー画像よりもテキストの方が効果的な場合もあるので、適宜使い分けが必要です。 ちなみに、一般的にバナー画像素材は広告主から支給されることが多いです。

アフィリエイト広告は良い?悪い?

このように本来は三方良しのアフィリエイト広告ですが、web上ではネガティブな意見も散見されます。 特に多いのが一部のアフィリエイターへの批判です。2000年代以降、ブログやCMSの普及により個人でもwebサイトを持つことが容易になったことで個人アフィリエイターが爆発的に増えました。

アフィリエイト広告は広告経由で商品が購入されない限り収益に繋がらないので、実際に当該商品を使っていないにも関わらず使ったように見せるレビュー記事や、根拠のないランキングサイト、虚偽のクチコミの掲載といったユーザーの信頼性を損なうような情報を発信するアフィリエイターが見られるようになりました。特に2014年頃には他サイトの情報を転載しただけの「まとめサイト」でのアフィリエイト収益が問題視されました。

※なおここではアフィリエイト広告主・個人アフィリエイターという観点から説明していますが、「低品質なコンテンツ問題」は著作権問題や信頼性含め、アフィリエイトに限らず現在のwebにおける広範な課題です。

当然こういったアフィリエイトサイトへの広告掲載はユーザーから広告主への信頼を傷つけかねないので、アフィリエイトサイトごとに広告の掲載可否が審査されています。仮に審査時だけ潔白だったとしても、その後の運営が悪質な場合には当該サイトへの広告掲載停止も含めた処置を取ることもあります。

現在ではアフィリエイトサイトが主なユーザー流入源としていたGoogleがアルゴリズムを改善したことも影響して、コンテンツの低品質なアフィリエイトサイトは激減しました。

アフィリエイトプログラム 商品アフィリエイトリンクを含むページで、商品の説明とレビューを元の販売者から直接コピーし、独自のコンテンツや付加価値を加えることなくそのまま掲載しているもの。 サイトの大部分がアフィリエーションで構成され、独自のコンテンツやユーザーへの付加価値がごくわずかしか含まれていない商品アフィリエーションのページ。 Google Search Console 「品質に関するガイドライン」

こうしたサイトの存在については一方的にメディア(アフィリエイター)のみが批判されるべきではなく、広告主ASP含めて健全な市場を作っていく必要があります。

アフィリエイト広告市場は2,933億円以上(2019年3月1日 矢野経済研究所調べ)と言われており、拡大を続ける中で業界の健全化が進められています。

株式会社矢野経済研究所:「~アフィリエイト広告への予算増加、インターネット利用の多様化による浸透で市場拡大へ~」

アフィリエイト広告業界の健全化に向けて

こういった問題も含め、ASP各社や日本アフィリエイト協議会やアフィリエイトマーケティング協会、日本インタラクティブ広告協会といったアフィリエイト・web広告関連団体も改善に努めており、更に消費者庁の定める『健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について』でも、アフィリエイト広告について景品表示法・健康増進法の処罰対象になりうるということを示しています。

日本アフィリエイト協議会 アフィリエイトマーケティング協会 日本インタラクティブ広告協会
近年、インターネットを用いた広告手法の一つであるアフィリイトプログラムを用いて、ア フィリエイターが、アフィリエイトサイトにおいて、広告主の販売する健康食品について虚偽誇大表示等に当たる内容を掲載することがある。 このようなアフィリエイトサイト上の表示についても、広告主がその表示内容の決定に関与している場合(アフィリエイターに表示内容の決定を委ねている場合を含む。)には、広告主は景品表示法及び健康増進法上の措置を受けるべき事業者に当たる。 健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について

アフィリエイト広告が持つ本来の合理性や信頼性は健全なエコシステムを前提としています。昨今はアドフラウドやブランドセーフティといった言葉が示すように広告の安全性や透明性が求められています。当社は直接アフィリエイト広告を出稿しているわけでもアフィリエイト収益を得ているわけでもありませんが、大手ASP様含めた各社様にアフィリエイトの配信システムをご導入頂いています。

ASP様の収益向上と業務の効率化を通じて、少しでもこういった取り組みの一端を担うことができれば幸いです。

なお今回のお話は広告業界に飛び込んだばかりの方が対象でしたが、もっと突っ込んだ話が知りたい!という方は、以下の記事で裏側の仕組みや技術的な面を解説しています。

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