画像広告と動画広告の情報量の差はこれだけある

まだまだ現役のバナー画像広告とリッチなコンテンツ体験が一躍注目されている動画広告。 今ではインスタグラムやtwitterも動画コンテンツをプッシュしており、静止画と動画をいかに組み合わせていくかが広告運用上(予算配分としても)重要でしょう。

さて、そんな静止画・動画ですが、そもそも広告に接する一般消費者とのコミュニケーションにおいて、どれほどの差があるのでしょう?

※ここでは動画広告をWEBページやアプリの広告枠に埋め込まれている動画の広告のこととしてお話します。 動画サイト等で、コンテンツ動画に挟みこまれる形で再生される広告は別の機会でお話できればと思います。

静止画像・動画で伝えることができる情報の種類

例えば「コンテンツの新しい楽しみ方を提案しユーザ層を広げる」という目的で広告を作成しようとした場合、その伝えたい内容を文章や画像で表現することは難しいものです。 また、コンテンツの魅力が動きの面白さにある場合などは、文章や画像で伝えることはかなりハードルが高いでしょう。 それよりも、コンテンツを楽しんでいる人の動画を配信したり、動きそのものを撮影して配信する方が、早く確実に伝わります。

逆に文字や画像だけで伝わる情報なのであれば、画像広告で十分と言えます。 ひょっとしたら単一言語・単一民族の日本の場合、文字情報や画像情報のウェイトが高かったり、既にある方法で楽しんでもらえるコンテンツが多かったり、という傾向があってバナー広告が依然として強い状態にあるのかもしれません。 逆に欧米では、言語や文化の違いを超えて訴求する必要があるので、映像や音だけでも伝えることができる動画広告が増えているのではと推測することもできます(ミュージカルが発展したのと同じ理由ですね)

伝えられる情報量の差

広告にとって、情報量と伝える情報の選択は重要な要素です。 ユーザに対し効果的な情報をより多く含めることができれば、アクションの意欲が高まり、期待するコンバージョンに結びつきやすくなるでしょう。

画像広告では、バナーの枠サイズによって含めることができる情報量が決まります。 これに対し、動画広告では時間軸が使えますので、同じ枠サイズ内でも含めることができる情報量が画像広告に比べて多くなります。

静止画と動画のクリエイティブ

ただし、この「動画広告は画像広告よりも情報量を多く含むことができる」という特徴には「ユーザが動画を見続けてくれた時間だけ」という条件がつきます。 さきほど「同じ枠サイズ内でも」と書きましたが、それはWEBページなどの占有面積だけを考えた場合であって、実際には時間軸があることを考えると違う枠サイズであると考えることが妥当なように思います。占有面積は媒体との交渉で購入し確保することができますが、時間軸はユーザに選択件があるのであらかじめ購入し確保するということができません。ユーザに見続けてもらうという工夫が必要になります。

静止画と動画の情報量の差イメージ

(x→画像の横幅、y→画像の縦幅、z→時間 のイメージ)

本来ユーザは、媒体となっているページや動画を閲覧することが目的でPCやスマホを使用しているので、そのユーザに対して興味を持ってもらって、広告を見続けてもらうということは難しいものだと思います。最後まで見続けてくれたり、途中でもクリックなどを行ってくれたりすれば、それ自体コンバージョンと言っても良いくらいです。ユーザを惹きつけ続ける映像と情報を出し続けなければなりません。

また、最も伝えたい情報が表示される前に再生を中断、離脱されることもあります。 そういったことを避けるためには情報を盛り込む順番にも意識を向ける必要があります。

コンテンツ本編を見るために広告再生終了まで待ってもらえるテレビとは違い、閲覧するユーザ側に行動の選択肢は多いので、より工夫が必要です。 最初から情報を出してユーザを引っ張り込んだ方がよい場合、最後まで肝心な情報を出さず十分に引っ張ってから出した方がよい場合、どちらが良いかはコンテンツの内容によると思います。

画像広告のクリエイティブ的強み

もし、伝えたい情報を選択し順番を考えた結果として素材を絞り込むことができた場合、その量によっては画像広告の方が適切であるということもあると思います。 画像広告には一瞬で情報を伝えることができ、かつ比較的コストが安いという特徴があるので、情報を絞ることができれば有効な選択肢になります。 情報を限定することで想像力をかきたてたり、好感を持ってもらいやすいということもあるのではと思います(こういう感覚は日本独特のものでしょうか)。

他媒体の代替としての違い

タレントの映像やイメージ映像、コンテンツを楽しんでいる人の姿を配信することで、コンテンツまたは会社自体に興味や好感を持ってもらうという手法があります。ブランドイメージを作るということですね。

これも画像と動画では伝えることができる情報の種類や質が違ってきます。

動画によるブランドイメージの認知度向上はテレビ広告が主に受け持っていた部分ですが、徐々にコンテンツ動画閲覧デバイスがテレビからネットデバイスに移っている傾向が見え始めている現状を考えると、テレビに代わって動画広告が受け持つことになるのかなと感じます。

インタラクティブな要素と組み合わせることで、テレビとはまた違った印象を持ってもらうこともできますね。 一方、画像広告は何かの媒体の代替というより独自の世界である、というように感じます。 車内広告ほど読んでもらえる時間が長いわけではなく、雑誌広告のように広い面積が使用できるわけでもない。インタースティシャル型の全画面広告であれば広い面積が使用できますが、印刷媒体とはやはり性質が違うように思います。

テレビと動画広告

そう考えると、さきほどテレビの代替として動画広告をとらえることができると話しましたが、性質の違いはやっぱりあると思いますので、その部分にも言及しないといけないかもしれません。

例えば「提供」という形で出稿することで本編コンテンツの内容やイメージをブランドに結びつけてもらうということがありますが、WEB媒体などの広告の場合そういうことは少ないですね。本編コンテンツとは関係なく動画が掲載されることを考慮して素材を作成する必要があります。 また、露出できるユーザ層の質が違います。テレビでないと開拓できないユーザ層というものもあるわけで、そういう意味ではテレビ広告はテレビ広告で引き続き重要なポジションを占め続けると思われます。

計測できるアクションの違い

私個人としては、おそらくこれが動画広告の一番の特徴でありメリットではないかと考えている部分です。 インタラクティブな要素と組み合わせる必要がありますが、ユーザがどこまで興味を持ってくれたか、何に興味を持ってくれたか、どこまで伝わったか、ということが推測できるようになります。

例えばマウスオーバーで動画再生開始、マウスを外すと動画停止(消滅)、クリックするとランディングという広告の場合、計測されたアクションから以下のような推測が可能になります。

動画の再生が開始された
少し興味を持ってもらった。またはマウスが偶然触った。
動画の再生が開始され2~3秒以上経過した
少し興味を持ってもらった。
動画の再生途中でクリックされた
クリックポイントまでの情報がユーザにとって重要な情報だった。
動画を途中まで再生したが、動画が停止した
停止ポイントまでにユーザに訴求する情報がなかった。
動画を最後まで再生したがクリックがなかった
ユーザの嗜好に近い内容だったが、興味は持たれなかった。または動画の内容を楽しんでもらえたが、広告の内容には興味を持たれなかった。

どこに興味を持ったかだけではなく、興味を持たれなかったということまで分かるのがポイントです。 広告主から見ればユーザに提供すべき情報や露出すべき媒体の取捨選択に、代理店から見ればユーザのプロファイリングに、など様々に活用できそうです。

静止画と動画それぞれの計測可能アクションイメージ

画像広告の場合はヒートマップなどを使用してある程度の推測はできるのですが、ユーザが明確に実行できるアクションとしてはクリックしかありません。 クリックがページ遷移や別タブ表示などのイベントを引き起こすことを考えるとアクションとして少し敷居が高く、内容に少し興味を持ったくらいのユーザにはクリックしてもらえないことも考えられ、ユーザの実像が捕らえにくくなります。全く興味を持たれなかったのか、少し興味を持ったのかの境目が見えません。 この点が動画広告の一番の特徴でありメリットである、と考える理由の一つです。

ただし、これらを実際にマーケティングに活用しようとすると、データの整理や分析に工夫が必要です。 動画素材や露出媒体は複数あることが普通ですので、それらを横並びで評価せず有機的に分析できる必要があります。レポーティングや条件づけには専用のシステムが必要そうです。

また、代理店から見ると、ユーザプロファイルできることは嬉しいのですが、露出先のユーザを限定してしまうと広告収入を集めづらくなるというデメリットもあり、いかにプロファイリングとマーキングを行うかは苦慮するところでしょう。 そういう意味ではメリットと言うより可能性と言った方が適切なのかもしれません。

以上が、私が考える画像広告と動画広告の違いです。 それぞれに特徴がありますので、後はそれをメリットと考えるかどうかは広告したい内容が何かによりますね。 何をどれだけ伝えたいか。場合によってはどういう情報を収集したいかを考え、取捨選択していくべきものだと思います。