新規流入ユーザーの満足度から考える回遊率/離脱率

回遊率とは簡単に言えば、一人あたりのユーザーがどれだけそのサイトのページを見てくれているかという考え方です(厳密には「ユーザー」より「セッション」単位で把握することの方が多いかもしれません)。 回遊”率”とは言うものの、一般的に以下のような数式で示されることが多いです。

回遊率 = PV数 ÷ セッション数

回遊率(つまりセッションあたりの閲覧ページ数)は多くの場合、高いほど良いとされ、以下のようなメリットがあると言われます。

サイト全体でのPV数が向上
広告媒体としてのサイト価値が向上する
収益点との接触機会が増加
回遊によりCV点へ接触しやすくなる
ユーザーのサイトに対するロイヤリティが向上
コンテンツとユーザーの単純接触量の増加

特にECサイトでは「ついで買い」を誘うための重要指標とされることもありますね。 このあたりについては以下の記事でも触れていますので、宜しければご覧下さい。

サイト運営者なら知っておきたい『回遊率』のお話

さて、では回遊率が低い、つまり離脱率や直帰率の高いサイトは悪いサイトなのか?というと、そうとも限りません。

ポジティブな離脱とネガティブな回遊

新規流入ユーザーの回遊率/離脱率と満足度の関係を考える際には「ポジティブな離脱」「ネガティブな回遊」があることに目を向ける必要があります。

「ポジティブな離脱」とは、ユーザーが満足し、目的を果たすことでそのサイトに求めるものがなくなった事による離脱です。

例えばあなたが、以前から場所だけは知っている地域の図書館にはじめて行き本を借りようと考えているとします。そこで、手持ちのスマホからGoogle検索で「○○市立図書館 開館時間」と検索。一番上に表示されたリンクから図書館の公式ページを開きました。

この図書館の公式ページにはファーストビューに開館時間が書いてあるので、このページを開いた時点であなたの目的は達成されます。そしておそらく、開館時間を確認できた多くの方はすぐにタブを閉じてしまうでしょう。

回遊率の観点だけで考えるなら、こういった「直帰」ユーザーは望ましくないわけですが、目的をスムーズに果たしたユーザーがサイトに感じる満足度は決して低くはないはずです。

これとは対照的な「ネガティブな回遊」とは、目的が達成できないことによってユーザーがサイト内を彷徨っている状態です。

例えば「○○市立第一図書館 休館日」で検索したユーザーが検索結果を見て、1位に表示された「○○市の図書館情報」というページをタップしたとします。

タイトルからユーザーはこのページに○○市立第一図書館の情報が載っていると思いましたが、このページに掲載されているのは○○市にある全ての図書館名とその詳細情報ページへのリンクだけで、休館日はリンク先の「詳細情報」ページでないと確認できませんでした。

※実際には現在のGoogleの方針上このように検索意図と情報の粒度が整合していないページは上位表示しづらくなってきています。またこういった情報サイトの価値を否定しているわけではありませんので、あくまで例示としてご理解下さい。

とはいえユーザーは改めて検索結果に戻るのも面倒なので、仕方なくこのサイト上で目的の「第一図書館の休館日」がわかるページを探します。しかしページ階層が深く、求めていた情報を得るのに手間取ってしまいました。

このような場合が「ネガティブな回遊」です。 計測上の回遊率は高くなりますが必ずしもユーザーの満足度は高くはありません。本来このユーザーは「図書館の休館日を知ること」が目的であって、そのゴールが達成できていない以上、回遊率が高いほどに満足度は下がってしまいます。

「ポジティブな離脱」「ネガティブな回遊」は、疑問を解決するための“リファレンス系”コンテンツ(例えば用語解説、●●とXXの違い…など)で特に念頭に置く必要があります。

こういったユーザーは問題の解決が第一目標であり、そもそもサイトへの流入自体が「その問題によってもたらされた寄り道」に過ぎません。早く離脱して本来の他のアクションに戻りたいというユーザーの欲求をスムーズに満たすという意味では、このように離脱率と回遊率の価値が逆転することも有り得ます。

「こういうケースは離脱率が高い方がいい」「回遊率は低い方がいい」などと断言するつもりは毛頭ありませんが、目的=そのサイトで解決したい課題が具体的なほど離脱しやすい・した方が結果的に良い場合もある、という認識は念頭に置くべきかと思います。

また当然リファレンス系コンテンツであっても、回遊率と満足度の高さが正比例するケースは多々あります。ここで伝えたいことは、回遊率というイチ指標だけではなく、回遊する“動機”に目を向ける必要がある、ということです。

ネガティブかポジティブかをどう見分けるか

こういったユーザー行動を捉えるのは、ユーザーの流入以前のバックグラウンドを把握する必要があるので簡単ではありませんが、流入経路ごとに得られる情報から推測することは可能です。

例えば自然検索であれば、サーチコンソールの「検索パフォーマンス(検索アナリティクス)」で当該ページへの流入キーワードを調べ、特に一問一答系でインフォメーショナルクエリが多いページはこのようなリファレンス目的での流入が多いと考える、といったアタリを付けることができます。

またGoogleAnalytics上でサイト内検索を利用しているか、特定カテゴリのページを複数回閲覧しているか、などを「ユーザーエクスプローラ」から分析するのも役に立ちます。

こういった手法はアナログなので手間がかかります。まずはスモールスタートで特に重要なコンテンツから順に着手すべきでしょう。 またユーザーごとの回遊率を考える上では新規ユーザーとリピーターの差を考慮する必要があります。何度も訪問しているリピーターであれば、新規更新ページだけをチェックし離脱するのはごく自然な行動です。

ポジティブな離脱であっても導線はあって然るべき

ネガティブであれポジティブであれ、他コンテンツへの導線を設計しなくていい、というわけではないことには注意が必要です。 ポジティブな離脱においても、そのユーザーが意識していない潜在的なニーズを満たすコンテンツへの導線を提示することで、ECでいうところの「ついで買い」のようにコンテンツを回遊する可能性は大いに有り得ます。

大切なのはユーザーに過不足ない導線を提示したうえで、その結果である回遊率にどういう評価をするのかということです。回遊率だけでユーザー体験の良し悪しを判断するのは少し早計でしょう。