WebメディアにおけるAI活用方法

人口知能(AI)の発展により「AIが当たり前の時代」「AIで無くなる仕事もあるかも」という話をよく耳にします。 AIに疎い筆者は「AI」と聞くとすぐソフトバンクの「Pepper(ペッパー)」や本田技研工業の「ASIMO(アシモ)」などの「ロボット」を連想するのですが、最近では、AIが動画広告のストーリーを作成したというニュースもあり、クリエイティブの領域にAIを活用する事例も出てきました。

キャンペーン・アジアパシフィック『AI、レクサス広告を作る』

弊社ではWebメディア向けのツールも開発をしているのですが、上記のようなAIのニュースを多く見る中で、WebメディアにおけるAI活用のニュースはあまり見ないように感じます。 この記事では、WebメディアでのAI活用方法に焦点を当て事例を交えながら見ていきます。

事例から見るWebメディアにおけるAI活用方法

WebメディアにおけるAIの使い方として、

  • ①メディア運営者の業務効率の改善
  • ②ユーザー体験の向上

の2つがあると弊社では考えています。それぞれに当てはまる事例を見ていきましょう。

①メディア運営者の業務効率の改善

「AIで流入を改善!?ビズリーチが初めて挑んだメディア事業が目標の430%に急成長した秘密」

BizHintより

こちらの事例内では、記事の修正(リライト)時に記事タイトルや記事本文についてAIが分析し、改善点を提案してくれる機能の紹介がされています。 感覚的になりがちなリライト作業ですが、

”…ちょっとした差に、人間は気付けないんですよね。”

とあるように、人間の目では見つけづらかった課題をAIで発見することができます。 もしこの機能が無ければ、検索されているキーワードを調べたり、ユーザーが知りたいことが何なのか妄想したり、そしてそれを既存の記事1本1本に行わなければならないので、業務負担は軽減されそうです。

②ユーザー体験向上の事例

①に比べると、メディアそのものの価値を向上させるような使い方となります。

『AIが「趣味嗜好・天気・曜日」などにより、あなただけに合った“3つのコンテンツ”をお届けする「three」』

threeより(画像はスマホ版)

このメディアでは、AIを使って一人ひとりに合ったコンテンツを予測します。 サイトを開いた瞬間からユーザーに適切であると予測されたコンテンツが表示されているので、ユーザーにとってみれば新しい体験かもしれません。

じゃあ具体的にAIって何ができるの?

WebメディアでAIが使われている事例を2つ見てきましたが、そもそもAIはどんなことができるのでしょうか。

AIを提供する代表的な1つの企業にIBM社がありますが、同社が提供するWatsonでは以下のようなことができるようです。 Watsonが使用されている事例、中でもWebメディアと関連しそうな事例も交えながら見ていきます。

大きくわけると①言語解析系②画像認識系③音声認識系の3種類の機能があり、それぞれ更にできることが細かく分類されています。

IBMソリューションブログ

①言語解析系

・「会話」
チャットボットなど対話型のサービスに使える
・「自然言語分類」
人間の言語の意味を解釈し、分類する
・「検索およびランク付け」
機械学習によりユーザーからの質問や照会に対して近い回答を提案する
・「文書変換」
文書を別の形式に変換する
・「探索」
大量のデータを検索しつつ、パターンや傾向を読み取る
・「性格分析」
テキストを通じてパーソナリティーを分析する
・「テキスト分析」
人間の言語の意図を解釈し、キーワードやカテゴリー、感情等を抽出する
・「言語変換」
ある言語から別の言語にリアルタイムに変換
・「感情分析」
テキスト上の感情を捉えたり、簡単な性格分析をしたりする

「性格分析」の事例

Twitterの投稿内容から性格を分析することもできるようです。

『Personality Insights-IBM Watson Developer Cloud』

例えば(テキスト分析の範疇かもしれませんが)自社のtwitterアカウントに寄せられたコメントの感情(ポジティブかネガティブかなど)をデータとしてわかりやすくしたり、フォロワーがどんなタイプが多いかを見て、自社のターゲット像の肉付けに使ったり等できるかもしれません。

②画像認識系

  • ・「画像解析」…機会学習したものを自動的に判別する

「画像解析」の事例

『ホームページのPVを500万増加させたウィンブルドンのテック活用―1440万本のハイライト動画を「Watson」のみで制作』

「画像解析」への分類が正しいか不明ですが、選手・ファン・試合データの分析により面白い部分を切り取る、という作業がIBM社のWatsonを使って行われています。

③音声認識系

  • ・「音声認識」…会話からテキストを書き起こす
  • ・「音声合成」…テキスト文書からリアルタイムで音声を合成する

上記各項目を掛け合わせたサービスの事例も紹介されていました。

会話×性格分析×画像解析

『Watson事例―ハワイに関する情報なら、JALのマカナちゃんにお任せ』

SNSの過去の投稿から性格分析をしたり、ユーザーがチャットボットに対して送信した画像等を分析しそれに応じたお勧めスポットの情報を提案してくれたりするチャット型バーチャルアシスタントの事例です。

以上、IBM社の提供するWatsonでできることをご紹介いたしましたが、AIを提供する企業は他にも多くありますので、企業の有する技術によっては他にもできることはあります。

まだまだこれから…!AI活用

今回メディアでのAI活用事例を調査してみて、AIの一部であるWatsonの機能や事例を見てみるだけでも、まだまだWebメディアにはAI活用の余地があると感じました。 筆者が思う、WebメディアでのAI活用が難しい理由のひとつとして、「記事制作」の業務で言えば、「事実を集め、まとめ、意味をもたせる」「把握している情報から考察し、会社・個人としての意見を出す」といった創造性が求められ、AIにおける創造性はまだ学術的な段階にあると思います。

AIがハリーポッターの新作を書いたというニュースもあったように、AIが文章を書く事例も出てきていますが、一般的に使える段階にはなさそうです。

AI(人工知能)にハリーポッター全7巻を学習させてハリポタの新作を書かせてみた。

ただ、ご紹介した事例のように”AIが分析・予測して提案する”ということに関してはツールとして普及し始めてきていますし、近い将来記事制作もすべて任せられるようになるかもしれません。 勿論メディア運営は記事制作が全てではありませんし、メディアによっては業務内容も異なります。 多岐にわたるメディア運営の業務をAIの機能を活用しカバーしたり、ユーザーの体験向上につなげたりと、AI活用の場はこれから広がっていきそうです。

AI活用が目的になってしまってはいけませんが、実現したいことがもしかするとAIで解決できる可能性があるので、手段の一つとしてAIを意識しておくことは有効だと思います。