広告の「価値毀損」とは

表示されている広告は適切か

広告が掲載されるメディアは、現在無数に存在しています。広告を出稿している広告主や広告代理店であっても、自社の広告がどんなWebサイトやコンテンツに配信されているか、すべてを把握することは困難です。自動で配信されるプログラマティック広告のネットワーク上では、広告の配信先は何万箇所にも及ぶことが珍しくありません。 そうした中で、近年は広告の「価値毀損」が問題視されるようになりました。

ビューアビリティ、ブランドセーフティ、アドフラウド

不適切な場所への広告掲載による悪影響

広告の「価値毀損」問題とは、不適切なWebサイトやコンテンツ、あるいは不適切なレイアウトで広告が表示されることによって、広告効果そのものが損なわれたり、ブランドイメージ低下・広告費の浪費を引き起こしたりすることを指します。 なお、一般的に広告の価値毀損は広告主の視点から言及されることが多いですが、広告を掲載されるメディアにとっても、不適切な広告が表示されてしまうことのリスクは存在します。

広告価値毀損における3つの主要な問題点

広告価値の毀損問題では、主に「ビューアビリティ」「ブランドセーフティ」「アドフラウド」の3つが論点になります。

ビューアビリティ

広告のビューアビリティとは、ユーザーが実際に視認できる範囲に広告が表示された割合を指します。ユーザーがWebページを閲覧するとき、必ずしもページに存在する全ての広告がユーザーの目に入るわけではありません。

たとえばページの構成上、スクロールしないと見えない箇所に広告枠が設置されていて、コンテンツよりも下部に設置されていたとします。 もしユーザーが広告を目にすることなくページを離脱・遷移した場合、実際にはユーザーが広告を見ていないにも関わらず、広告のインプレッションが計測されてしまう、ことになります。

少し古いデータですが、2014年にGoogleが発表した調査では、広告予算のうちおよそ50%を浪費しているとしています。

参考:5 factors of display advertising viewability(英語)

こうしたインプレッション上の計測 - 実態における乖離は、意図的に起こそうとせずとも発生するものではありますが、広く採用されているCPM課金の広告メニューなどでは、実際に閲覧された回数と、計測上のインプレッションに乖離があることは、本来意図している効果や広告費に影響します。

インプレッション計測上の問題に対し、アメリカのInteractive Advertising Bureau(IAB)とMedia Rating Council(MRC)は、実際にユーザーが目にするインプレッションである「ビューアブルインプレッション」を、

  • ・バナー広告画像のピクセルの50%以上が、描画されてから1秒以上表示されること
  • ・動画広告の場合はピクセルの50%以上が、描画されてから2秒以上表示されること
と定義しています。

参考:MRC Viewable Impression Guidelines

国内の団体である一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)でも、上記のAIB/MRC基準に準拠したガイドラインを発表しています。

参考:ビューアブルインプレッション測定ガイダンス

ブランドセーフティ

ブランドセーフティとは、広告主のブランドイメージを毀損する可能性のあるWebサイトやコンテンツに広告が表示されるリスクから、広告主のブランドを守る取り組みのことを指します。

Web広告は数多く配信されます。その中には前述のとおり、広告主が知らない掲載面も含まれます。そうした掲載面の中に不適切なものが含まれていたら、広告主のブランドイメージに傷がつく可能性は十分にあります。

R指定や薬物、反社会的な情報や、違法アップロードされたコンテンツを掲載するWebサイトに広告が表示されれば、それらのコンテンツに与する印象をユーザーに与えかねません。広告主だけでなく、もし違法なコンテンツを掲載面として仲介してしまえば、広告代理店もリスクを負うことになります。実際に、海賊版コンテンツを提供するWebサイトに広告の配信ネットワークを提供していた広告代理店が提訴された事例が存在します。 前述のJIAAは、2019年に「広告掲載先の品質確保に関するガイドライン(ブランドセーフティガイドライン)」をまとめ、犯罪の助長や違法な性表現、薬物や商標・著作権侵害といった計8ジャンルのコンテンツについて広告掲載の排除に努めるべきだとしています。

参考:広告掲載先コントロールによる「ブランドセーフティ」確保に関するJIAAステートメント

ただし、コンテンツそのものが問題なくても、ブランドとコンテンツの”文脈”によって不適切になる可能性はあります。例えば「火災を報じるニュース」に「焚き火をイメージしたキャンプ場のバナー広告」が表示されているのを見て不謹慎と捉えたり、「自動車についての情報サイト」に表示される「ビール」の広告から飲酒運転を想起したりするユーザーもいるかもしれません。このようなコンテンツと広告のミスマッチから生じるブランド毀損は、個別の広告キャンペーンのコントロールにかかっています。膨大は掲載面をフィルタリングするためには、システム化された仕組みを導入するのが最も有効でしょう(当社でも、過去に広告代理店の配信システムにブランドセーフティ機能を実装しています)。

ブランドセーフティは広告主だけの問題ではありません。掲載面を提供するメディアにとっても、不適切な広告が表示されることでユーザーからの信頼に傷がつく可能性をはらんでいます。広告主、メディア、広告代理店すべてがリスクを認識し、監視していく必要がある問題です。

アドフラウド

アドフラウドとは、クリック数やインプレッション数を操作するなどの不当な手法で広告主から広告費を搾取する行為のことで、虚偽の成果でパフォーマンスの評価を歪めるだけでなく、広告市場の信頼性を損なう深刻な問題です。JIAAのステートメントでは、こうした広告費の搾取を目的としたWebサイトの運営主体を” 小遣い稼ぎ目的の一個人から、反社会的勢力との関連が疑われるような国内外の悪質事業者まで、様々なプレイヤー”としています。

参考:アドフラウドに対するJIAAステートメント

アドフラウドには様々な手法があり、国内外の業界団体でも類型に多少の差異がありますが、欧州インタラクティブ広告協議会(IAB Europe)では、Botによって不正なトラフィックを獲得したり、低品質なWebサイトのURLのURLを偽装して信頼できるWebサイトと誤認させたり、複数の広告を重ねて表示することによって視認できない(がインプレッションは発生する)手法などについて列挙されています。

参考:IAB Europe's Guide to Ad Fraud

アドフラウドの横行によって損失を被るのは、広告主だけではありません。そうした広告表示を許してしまった広告配信事業者は、配信プラットフォームの信頼を損ない、顧客離れに繋がる可能性もあるでしょう。また言わずもがな、一般のユーザーにとっては、不要な広告を目にする機会が増加することで、利便性を損ない、ストレスを増大させます。場合によっては個人情報・セキュリティ上のトラブルや、デバイスのパフォーマンス低下などの具体的な被害が生じるかもしれません。

広告に関わるすべての関係者が共通して考慮すべき問題

広告価値毀損の問題は、広告主、広告配信事業者、そしてユーザーにとって深刻な問題です。広告主は広告の掲載面を、メディアは自分の掲載面に表示されている広告を、それぞれ目で見て確かめることが最も確実ではありますが、現実問題として、複雑なネットワークを介して配信される、膨大な数の広告・掲載面をすべて人の目で検めるのは難しいです。

昨今は生成AIの浸透に伴い、広告を表示させて収益を得るためだけに作られた「MFA(Made-for-Advertising)」と呼ばれるWebサイトも問題視されています。 広告配信に伴う、さまざまな問題に対して、システムによる解決をご検討の際には、ぜひ広告システムの開発に強い当社にご相談ください。

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